こんにちは!プロオンライン家庭教師のめじろです。
吉本興業のお笑い芸人すゑひろがりずさんが、瑛人さんの「香水」という曲を和風にアレンジしていました!
古典で重要な活用表現なども多かったので、サクッと品詞分解してみたいと思います。
すゑひろがりずの香水|和風変換の品詞分解【その1】
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さっそく品詞分解していきます!
①つき+て+は
- つき:カ行四段・動詞「つく」の連用形
- て:接続助詞
- は:格助詞
②いとま
ゆとり・暇
③あり+ませ+ぬ+か
- あり:ラ変動詞「あり」の連用形
- ませ:助動詞「ます」サ変型の未然形【丁寧】
- ぬ:助動詞「ず」の連体形【打消】
- か:格助詞【疑問】
④みとせ
3年
⑤合はせ+ね+ど
- 合はせ:サ行下二「あはす」の未然形
- ね:助動詞「ず」の已然形【打消】
- ど:接続助詞
⑥いかが+せ+む
- いかが:副詞「どのように」
- せ:サ変動詞「する」の未然形
- む:助動詞「む」の終止形【推量】
⑦あり+けり
- あり:ラ変動詞「あり」の連用形
- けり:助動詞「けり」の終止形【過去】
⑧つがひ+て
- つがひ:ハ行四段「つがふ」の連用形
- て:接続助詞
歌では「つがいで」とありましたが古語では「つがふ」という動詞として使います。
⑨参りて
- 参り:ラ行四段「まゐる」の連用形
- て:接続助詞
⑩あまた
数多く・たくさん
⑪詠みにけり
- 詠み:マ行四段「詠む」の連用形
- に:助動詞「ぬ」の連用形【完了】
- けり:助動詞「けり」の終止形【詠嘆】
古語的に訳すと「詠んだものだなあ」という詠嘆がしっくりきます。
すゑひろがりずの香水|和風変換の品詞分解【その2】
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どんどんいきましょう~!
①たもれ
- たもれ:ラ行四段動詞「たまはる(給る)」がなまって「たもうる」に変化したもの。「たもれ」は命令形。「~しておくれ」という感じです。
元来の古語の意味としては、目上の人が、目下の人に使う言葉となります。
②ならずもの
素行の悪いごろつき。
③らうぜき
無法な行為・無礼なこと
④枕+ぬら+させ+ど
- 枕:現代の枕と同じ意味ですが、「濡れる」ことで「寝ながら泣く」という意味になります。
- 濡ら:ラ行下二段動詞「濡る(ぬる)」の未然形
- させ:助動詞「さす」の未然形・連用形【使役】 ※
- ど:接続助詞 ※
「させど」というつながりは、古文では不自然な表現で、正確には「さすれど」になります。
接続助詞の「ど」は、活用語の「已然形」につきます。「さす」の已然形は「さすれ」なので、「枕濡らさすれど」が正解です。
⑤おら+ね+ど
- おら:ラ変動詞「をり」の未然形
- ね:助動詞「ず」の已然形【打消】
- ど:接続助詞
⑥はべら+れる
- はべら:ラ変動詞「はべり」の未然形
- れる:古語的に正解なのは「るる」。助動詞「る」の連体形【受け身】
古語的には、「はべられる」ではなく、「はべらるる」が正解。「はべる」のは「そち」なので、歌の詠み手から見ると「相手にそばにいられる」という受け身になります。
⑦しのば+れる
- しのば:ハ行四段「偲ぶ」の未然形
- れる:古語的に正解なのは「るる」
古語的には、「しのばれる」ではなく、「しのばるる」が正解。「しのぶ」のは歌の詠み手なので、「自然とそうなる」という自発の意味になります。
上の「はべらるる」とセットで考えると勉強になります!
すゑひろがりずの香水|和風変換の品詞分解【その3】
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まだまだ続きます。
①あひ+て
- あひ:ハ行四段「会ふ」の連用形
- て:接続助詞
②申す+べき+や
- 申す:サ行四段「申す(まうす)」の終止形
- べき:助動詞「べし」の連体形【推量】
- や:係助詞【疑問】
③うるわしう+なり+候ふ
- うるわしう:形容詞シク活用「うるはし」の連用形「うるはしく」がなまったもの。
- なり:ラ行四段「なる」の連用形
- 候ふ:ハ行四段補助動詞「候ふ」の終止形【丁寧】
「候ふ」は、ここでは「~ます・ございます」と丁寧にする役割です。
④いかが+せ+む
- いかが:副詞。「どのように」
- せ:サ変動詞「す」の未然形
- む:助動詞「む」の終止形【推量】
「いかがせむ」は通常、「(私は)どうしたらよいのだろう」という意味ですが、ここでは主語が「そち」と考えて、「(あなたは)どうしたことをしているのだろう」と読ませているのかもですね。
⑤にはかに+や
- にはかに:形容動詞ナリ活用「にはかなり」の連用形
- や:間投助詞【詠嘆】
「にはかなり」は「急だ・とつぜんだ」という意味があります。「や」は疑問・反語の意味ではないので、間投助詞の「や」だとみなします。
突然たばこを吸い始めた女に対し、「とつぜんだなあ」と思っているととらえられます。
⑥わびしから+ぬ+ぞ
- わびしから:形容詞シク活用「わびし」の未然形
- ぬ:助動詞「ず」の連体形【打消】
- ぞ:係助詞【強い断定】
係助詞の「ぞ」は、文末に付くことで「~だぞ!」という強い断定をあらわします。「悲しくなんてないぞ!」という、読み手の強がりが表現できています。
ちなみに、古語で「わびし」は寂しい・やりきれない・がっかりする・みすぼらしいなど、さまざまな意味があり、文脈により読み分けます。
⑦うつろひ+し+のみ+なれ+ば
- うつろひ:ハ行四段「うつろふ」の連用形
- し:助動詞「き」の連体形【過去】
- のみ:副助詞(~だけ)
- なれ:助動詞「なり」の已然形【断定】
- ば:接続助詞(已然形に接続する場合は【理由】)
「うつろひし」=「変わった」
「のみなれば」=「だけなのだから」
→「変わってしまっただけなのだから」となります。すゑひろがりず、勉強してますね!
すゑひろがりずの香水|和風変換の品詞分解【その4】
感謝祭ありがとうございました〜!!
渋し!!!!!!!!!!!ポン!! pic.twitter.com/HtynilFFXw— すゑひろがりず三島 (@SUEmishima) October 3, 2020
①あら+ね+ど
- あら:ラ変動詞「あり」の未然形
- ね:助動詞「ず」の已然形【打消】
- ど:接続助詞(~けれど)
②しのば+せ+る
- しのば:ハ行四段「偲ぶ」の未然形
- せ:助動詞「す」の未然形【使役】
- る:助動詞「る」の終止形【受身】
「しのばせる」は、「思い出させる」という意味なので、「しのばせる」の「せ」は「~させる」の使役・「る」は「香の物によって思い出させられている」という意味で、「受身」だととらえることができそうです。
③なれ+ど
- なれ:助動詞「なり」の已然形【断定】
- ど:接続助詞(~とはいっても)
④たのしかり+し+ころ
- たのしかり:形容詞シク活用「楽し」の連用形
- し:助動詞「き」の連体形【過去】
- ころ:名詞(~の時分・とき)
「ころ」という名詞に接続するため、「き」を連体形の「し」に活用させています。
⑤もどら+まほし
- もどら:動詞「もどる」の未然形だと思いますが、古文ではラ行四段動詞「かへる」の方が一般的。
- まほし:助動詞「まほし」の終止形【希望】
より古文的表現にするには、「もどらまほし」ではなく、「かへらまほし」が正解で、「前の状態に戻りたい」という希望になります。
⑥おもは+ね+ども
- おもふ:ハ行四段動詞「思ふ」の未然形
- ね:助動詞「ず」の已然形【打消】
- ども:接続助詞(~だけれども)
⑦見ら+ば+覚ゆ
- 見ら:古語的には「見ら」という活用はありません。上一段動詞「見る」の未然形か、已然形が入るので、未然形なら「見(mi)」、已然形なら「見れ(mire)」になります。ここでは、「見ると…」という単純な順接の意味になればよいので、已然形の「見れ」が正解。
- ば:接続助詞。已然形に接続する場合、理由や順接の意味になり、文脈で読み分けます。
- 覚ゆ:ヤ行下二段「覚ゆ」の終止形(思い出される)
「見れば覚ゆ」にすれば、「見ると自然に思い出される」という意味になります。
すゑひろがりずの香水|和風変換の品詞分解【その他の表現】
上記で紹介していない表現が2つありますので、最後におまけで解説します。
枕もすでにかわきつつ
「ひとにほらふきて つまはじきにされ 枕もすでにかわきつつ」は読んで字のとおりですが、「枕がかわく」という表現、品詞分解【その2】にあった『枕ぬらさせど』との対比表現になっています。
古典では、袖や枕が濡れる→悲しくて涙を流す(特に恋により)という意味で使われますが、万葉集で
「濡れにし袖(そで)は干せどかわかず」(濡れてしまった袖は、干しても乾かない)、つまり、「いちど悲しんでしまったわが心は、干したところで(涙は)乾かない」という表現があります。
すゑひひろがりずも、「濡れる」「かわく」を対比として使っているところが面白いです。
ただ、表現としては対比されているのですが、すゑひろがりずの「香の物」の場合、
- 枕を濡らすのは他の人
- 枕がかわくのは自分
になっていて、主語がことなっています。とはいえ、音としての面白さという面では、よく考えられていると思いました!
われが袖にされ候ふ
「袖にされる」という表現は、古語ではあまり一般的ではないように思いますが、古典的な響きがあるので使ったのだと思います。
「袖にされる」=「自分が袖のように扱われる」=袖を振る→フラれる
と解釈もできますし、
「袖にされる」=「袖で追い払われる」→邪険に扱われ、フラれる
という意味とも取れます。
原曲は「フラれる」でも、「袖にされる」にすることで、言葉遊びができますね。すゑひろがりずのセンス炸裂です。w
すゑひろがりず南條は「言語通(ツウ)」?出身大学は大阪外国語大学
今回の「香の物」、古文をしっかり勉強していないとできない表現も多かったです。
ただ単に古語をネタにしているだけではなくて、言葉を操れているようにも感じました。
ぜひ、ネタを通して、これからも多くの人に古語の面白さを伝えてほしいと思います♪
ちなみに、すゑひろがりずの南條さんは大阪外国語大学を出ています!言語能力高そうですね。
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